気候変動による異常気象や自然災害がサプライチェーン全体に及ぼす影響に対し、適応策や予防・軽減策を講じておくことは中長期的な経営のレジリエンス強化につながります。私たちは、温室効果ガス排出量の削減に寄与する様々な施策を講じ、環境に配慮した商品・サービスの拡充を通じて競争優位性の確保とサステナブル経営の両立を着実に進めていきます。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて
気候変動は全世界共通の喫緊の課題であるとともに、原料価格の高騰や大規模な自然災害によるサプライチェーンの断絶など当社の事業においても重要なリスクの一つです。このことから私たちは気候変動をサステナビリティにおける当社の重点課題の一つとして位置づけ、2050年カーボンニュートラルを実現することを目指しています。事業成長とカーボンニュートラル達成の両立は難易度の高いミッションです。しかしながら、グローバルにビジネスを拡大していく中で、私たちは気候変動に関する国際基準や要求に真摯に対応し、CO2削減に向けた施策を着実に展開していく必要があると認識しています。私たちはTCFDフレームワークに基づき、事業全体でのCO2削減戦略を策定しています。オフィス・店舗等への再生可能エネルギーの導入、需給予測によるロス低減、効率的な物流体系の構築など、事業戦略と連動した有効な打ち手を中長期的に実行・検証しています。
脱炭素社会への移行を目指したCO2削減シナリオの策定
原料価格の高騰やサプライチェーンの断絶など、地球温暖化は中長期的にビジネスに大きな影響を及ぼすリスクです。私たちはScope1+Scope2(自社領域)に加え、新たにScope3(自社領域外)のCO2削減シナリオを開示します。Scope3では、直接取引のあるサプライヤーの生産工程におけるCO2削減計画の策定を支援しています。また、将来的には原料栽培・紡績など2次サプライヤー以降にもアプローチすることでCO2排出源の深掘りと効果的な支援を進めます。なお、開示する削減シナリオは世界の気温上昇を1.5℃以下に抑える気候移行計画に整合していることを確認しています。
商品カーボンフットプリントの可視化
私たちはカーボンニュートラルを達成するため、商品のライフサイクルを分析し、各プロセスのCO2削減ポテンシャルを深掘りしています。主力商品である衣料品ならびに雑貨類に関して、商品1点当たりの平均的なCO2排出量を算出・分析しました。これにより、各プロセスにおける省エネルギー施策や環境負荷の低いエネルギーへの切り替えなど具体的な戦略を導き出し、ビジネスパートナーと協働して温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいきます。将来的には商品情報の一つにCO2排出量を明示することで、購買判断の一助とすることを検討します。
*算定対象とする構成要素:商品本体、本体に付属するビニール包装、輸送時に使用するダンボール等
*CO2算出に当たり、一次データ(直接測定されたデータ)と二次データ(活動量から算定されたデータ)を使用。
二次データの排出係数はIDEA Ver.3.3および環境省 排出原単位データベースVer.3.4を利用
*原材料調達やお客さまでの使用時など情報の取得が困難なプロセスについてはシナリオ等を設定
気候変動に関する財務影響
当社ではTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに則った情報開示を進めています。
バリューチェーンでの環境負荷軽減に向けた取り組み
効率の良い物流システムの構築で環境負荷を低減
当社では物流活動に伴うCO2排出量を把握するため、ビジネスプロセスにおける環境負荷の影響を明らかにし、適切な削減施策を実行しています。例えば、物流センターでは商品発送時に同梱していた納品書兼領収書の廃止や商品サイズに合わせた段ボールを使用することで、省資源化につながっています。また、輸送効率の向上を目的に、商品配送頻度や積載率向上、共同配送の仕組みづくりなど総合的な改善を進めることで、CO2排出量の削減に寄与します。
お客さまと創る新しいショッピングスタイル
開始から10年目を迎える「REBAG PROJECT」は、2024年2月までに累計1,980万枚のショッピングバッグ利用を削減し、マイバッグの利用を当たり前にする新たなショッピングスタイルを創り上げました。これは1年間に2,626本の杉の木が吸収するCO2量(約23t-CO2)に相当*します。今後もお客さまとともに、サステナブルな選択をファッションの魅力として楽しむショッピングスタイルを創り上げていきます。
*杉の木1本あたりの年間CO2吸収量を約8.8kgとした場合
生物多様性&自然資本
私たちの主要事業であるアパレル小売ビジネスは自然資本に多くを依拠していることから、事業活動全般において、環境のみならず生物多様性にも配慮したビジネスを推進することを心掛けています。地球環境や生物多様性に配慮しなければ、企業活動そのものが成り立たず、私たちの商品・サービスがお客さまに受け入れられなくなると考えています。これまで培ってきた当社の知見や新たなソリューション技術等も駆使しながら、原料調達から廃棄・リサイクルまでの事業活動の各プロセスにおいて、自然の恩恵に依存している事柄、自然に影響を与えている事柄を整理していきます。
海洋プラスチック流出防止に向けた取り組み
近年、海洋汚染の原因の一つとして考えられている衣服等から発生する「繊維くず」。私たちはアパレルを扱う企業としてこの問題解決に取り組む重要性を認識しています。当社ビジネスを通じた解決手法の一つとして、繊維くずの流出を80%低減*することができる洗濯ネット「FIBER HOLD BAG」を販売しています。これは通常のものよりも細かい網目(0.05mm) の生地を使用し、当洗濯ネットで捉えられた微細な繊維くずが流出しにくい機能を有しています。洗濯時の環境配慮とともに衣服の摩擦劣化防止にも寄与する、当社ならではの商品です。
*繊維くずの流出抑止効果は洗濯ネット未使用の場合と比較した場合